大阪モデルで岡山県の感染状況を測ってみた

大阪府が、休業や外出自粛の要請を段階的に解除するための独自基準を定めました。「大阪モデル」と呼ばれ、全国的な注目を集めています。

①新規感染者のうち経路不明者が10人未満(7日移動平均)

②検査件数に対する陽性率が7%未満(7日間移動平均)

③重症者向け病床使用率が60%未満

という3項目を7日間連続で達成すれば自粛を段階的に解除するというものです。

上記の基準に関して、岡山県の状況を、公表データ等を基に作成してみました。なお、岡山県は、重症者数を公表していないので、③の基準を満たしているかどうかは、担当部局からの聞き取り調査などから、私が推測したものです。(※1)

(1)5月7日(対象期間4/30~5/6)

① 0人・・・基準クリアー

② 0%・・・基準クリアー

③ 基準クリアー

(2)5月6日(対象期間4/29~5/5)

① 0人・・・基準クリアー

② 7%・・・基準クリアー

③ 基準クリア―

(3)5月5日(対象期間4/28~5/4)

① 0.14人・・・基準クリアー

② 7%・・・基準クリアー

③ 基準クリアー

(4)5月4日(対象期間4/27~5/3)

① 0.14人・・・基準クリアー

② 7%・・・基準クリアー

③ 基準クリアー

(5)5月3日(対象期間4/26~5/2)

① 0.29人・・・基準クリアー

② 7%・・・基準クリアー

③ 基準クリアー

(6)5月2日(対象期間4/25~5/1)

① 0.29人・・・基準クリアー

② 7%・・・基準クリアー

③ 基準クリアー

(7)5月1日(対象期間4/24~4/30)

① 0.57人・・・基準クリアー

② 5%・・・基準クリアー

③ 基準クリアー

(※1)③の基準クリアーについての考え方  岡山県の感染者は累計で23人(7日現在)。そこから退院者を引いた数が入院者数なので、入院者数はピーク時でも20人弱(7日時点では8人)。重症化する割合は2割程度なので、ピーク時でも4~5人程度と推測した。聞き取り調査などから、実際はそれよりも少ないと考えている。日本アルトマークの調査では、岡山県内のIUC病床数は183床。この1週間の中で、重症者向け病床使用率が60%以上になっているとは考えられない。

3項目を7日間連続で達成し、「大阪モデル」の自粛を段階的に解除する基準を満たしました。岡山県では、7日から、外出やイベント開催、店舗営業などの自粛要請を一部条件付きで緩めているので、「大阪モデル」をクリアー出来ていないようでは洒落になりません。ひとまず安心しました(地域差があり、大阪モデルをそのまま岡山に当てはめるのは適切でない場合があるので、あくまで参考程度に考えています)。

「大阪モデル」のような明快な判断基準は、どういう状態になれば行動制限が緩和されるのか、住民にとって分かりやすく、予見性も高まります。また、行政にとっても、住民にとっても、その目標を達成しようという動機づけになり、目標管理という観点からも意味があるのではないでしょうか。

現在、政府も、緊急事態宣言解除に向けた判断基準の作成に着手しており、14日を目途に策定する方針だそうです。西村康稔大臣は記者会見で、新規感染者ゼロが1週間続いた岡山など17県について、こうした状況が続けば緊急事態宣言の解除が「視野に入ってくる」と述べました(残念ながら、岡山県は8日に1人新たな感染者が出たようです)。ただ、岡山県が対象エリアから外れても、「それじゃ、明日からコロナ以前の通常の生活に戻りましょう!」とはならないわけで、県は、行動制限に関する県民への要請を、レベルを変えながら続けていくことになると思います。行動制限を緩めれば、感染者が増加するリスクが高まり、実際にそうなれば、再び行動制限を強めることになるでしょう。

そうであれば、蛇口を緩めたり閉めたりするにあたり、その都度、バタバタするよりも、一定の基準に従い対応するほうが、わかりやすく、混乱も少なそうです。もちろん、神様ではなく人間が作った基準ですから、絶対視するのは危険です。相手は未知のウィルスなので、基準策定時にわからなかったことが、後でわかることもあるでしょう。刻々と事態は変化するので、基準が独り歩きすることがないよう、絶えずチェック&フォローをしていく必要があります。状況によっては、基準をそのまま当てはめないときもあるかもしれませんし、必要なら修正すれば良いと思います。その場合は、運用が恣意的にならないよう、説明責任を果たすこととセットです。

私は、岡山県でも、「大阪モデル」のような、基準づくりを進めるべきだと、1ヵ月くらい前からずっと申し上げてきました。ただ、最近になって、基準をつくるにしても工夫が必要だな、と感じています。

というのは、県内では新規感染者ゼロの状態が1週間以上も続いたからです(繰り返しますが、8日に倉敷市で感染者が一人出たので、新規感染者のゼロ更新は止まりました)。PCR検査の絶対数が少ない状況では、感染者の「数」だけを指標にするのは問題があります。したがって、「率」に注目するわけですが、陽性率であれ、新規感染者の前週からの増加(減少)率であれ、感染者に占める感染経路不明者の比率であれ、分子がゼロになると、どんなに厳しい基準をつくってもクリアーしてしまい、基準として機能しなくなってしまいます。

また、岡山県の場合、新規感染者数を日ごとにグラフ化しても、テレビなどでお馴染みの感染ピークの山がはっきりわかるような棒グラフにはならず、4日に1人くらい(2月1日からの5月7日までの平均)割合で、ぽつりぽつりと感染者で出るという、棒が「飛び石」で水面から顔を出しているようなグラフになります(左下のグラフ参照)。感染ピークが下がっていく過程で、「ここまできたらまずは一安心」という地点を見出すための「大阪モデル」とは、違った角度から基準を考えた方が良いでしょう。定量的な基準にこだわらず、客観性が担保できるのであれば、定性的なものになっても構わないと思います。

岡山県は、すでに徐々に行動制限を緩める段階に入っています。基準づくりも、出口戦略について検討する指標というよりも、第2波、第3波の到来に備え、その際の入口戦略を考える際に使うことを意識したほうが良いかも知れません。

大阪モデルで岡山県の感染状況を測ってみた” に対して2件のコメントがあります。

  1. 西原靖子 より:

    わかりやすい指標で、賛成です。
    煽るような報道が多いと思われるため、客観的な数字で方向性を示していく事が大切だと思います。

    「緊急遺体宣言の解除」、になってしまってます。
    誤字のインパクトが大きいと思うので書き込ませてもらいました。

    訂正されれば、こちらのコメントは消してくださって構いません。

    1. 高橋とおる より:

      ありがとうございます。

      確かに、誤字とはいえ、縁起でもない間違いでした。

      お詫びして、訂正します。

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