児童虐待防止について

 東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)が死亡した事件で、結愛ちゃんは免疫に関わる臓器が萎縮し、重さが同年代の約5分の1だったことが、捜査関係者への取材でわかりました。
https://www.asahi.com/articles/ASL685TGQL68UTIL03P.html

 この事件、「もっとあしたはできるようにするから もうおねがいゆるして」などと結愛ちゃんが書いたノートが公表され、胸が締め付けられるような気持ちになった方も多いと思います。私も、哀しさと怒りとやるせなさで、身体が震えました。

 ワイドショーでは、コメンテーターの一人が「父親が子どもにしたことと同じことを父親にしてやればいい」と語っていました。非常に強い表現ですが、多くの視聴者が、その言葉に共感したに違いありません。しかし、悪魔のような親を断罪するだけでは、子どもの命は救えません。私は政治家なので、嘆いたり怒ったりするだけでなく、このような悲しい事件が二度と起こらないために何が出来るのかについて考えたいと思います。児童相談所(以下、児相と表記)の設置主体は地道府県や政令市であり、私は、県議会で児童虐待防止対策などを所管する「環境文化保健福祉委員会」の委員です。当事者の一人という自覚を持ち、対応策を考えてみます。

 報道を接し、目黒のケースでは以下のような疑問が頭に浮かびました。
①結愛ちゃん一家は今年1月に香川県から東京都に転居したため、二つの児相が対応に関わったが、児相間の情報共有に問題はなかったか。
②東京の児相が母親に結愛ちゃんとの面会を拒まれた時、警察と連絡を取り合って安否確認をすべきではなかったか。
③東京の児相において、人員の量(数)や質(児童福祉司など専門性の高い人材)など体制面で問題はなかったか。
④結愛ちゃんの虐待は、香川時代に通報と保護が繰り返されており、父親は結愛ちゃんへの傷害容疑で2回書類送検されている(いずれも不起訴処分)ことを考えると、親権を一時的に停止し、結愛ちゃんを安全な場所に保護する等の措置がとれなかったか。

①については、今後、両児相の対応に関する検証結果を待ちたいと思います。現在、報道ベースで出ている情報だけでは、何とも判断がつきません。先日、岡山県でも他県との引き継ぎに問題がないか担当課にヒアリングをしましたが、大きな問題はないと思うとの回答でした。本当にそうであれば良いのですが、それでも改善の余地はあるかもしれません。今回の事件の検証結果が出たら、それを踏まえ、再度点検をしたいと思います。併せて、これは国マターの課題ですが、ICTを活用し児童虐待に関する記録を全てデータベース化し、全国の児相で共有するなど基盤整備についても研究すべきだと思っています。

②については、児相と警察との情報共有や協働のあり方について点検し、改善を行うべきでしょう。虐待の情報については、基本的に児相から警察に全件共有すべきだと思いますし、どのような場合に児相と警察が一緒に動くかについても、基準を明確にする必要があります。過去に虐待が認められたケースで、親が児相職員と子どもとの面会を拒んだ場合は、警察に通報し、親の同意の有無にかかわらず子どもの様子を確認すべきだと思います。

③については、私は当該児相の状況を詳しく実情を知らないので、ニュースなどを見た限りの印象論です。ただ、小池百合子東京都知事がさっそく児相のマンパワーの強化を打ち出したので、全くの的外れではなかったようです。、岡山県内の児相の状況についても、関係者に話を伺うなどして、今の体制で十分課題に対応できているのか調査をしたいと考えています。ただ、人員の増強というのは予算を伴うもので、限られた資源をどこに配分するかという問題でもあります。世間の注目を集める事件が起こると、そちらの対応を優先すべきというバイアスが強烈に掛かります。バイアスの存在に留意し、適切なバランス感覚を保てる冷静さは持つべきでしょう。

④は、いわゆる「強すぎる親権」の問題です。現状でも、親族などが家庭裁判所に申し立てれば親権を取り上げることができる「親権喪失」と呼ばれる制度があります。しかし、親から親権を奪うと無期限にその権利が失われることになるため、多くの児童虐待の現場では、親子が再統合できなくなるおそれがあると判断し、「親権喪失」の申立てはほとんど行われていないそうです。そうした中、国は、2011年に親権に関する法律を改正し、無期限に親権を取り上げるのではなく、虐待や育児放棄をした親の親権を一時的(最長2年)に停止するという新たな制度を設けました。結愛ちゃんのケースで、そのような措置をとれなかったのでしょうか。結果を見ると残念でなりません。制度があっても、運用レベルで躊躇があるのだとすると、虐待が認められた際の親権喪失や一時停止に関する判断基準について再検討が必要かもしれません。

 また、結愛ちゃんは東京に転居後、保育園や幼稚園に通っておらず、外出もほとんどしていないことから、教育機関や行政、地域などと接点がなかったそうです。現状、幼稚園や保育園に通っていない子どもは、乳幼児の検診以降、小学校入学まで、行政のチェックやケアが行き届かない隙間の期間があるのではないでしょうか。隙間を埋める仕組みについても検討が求められます。

 ところで、岡山県内の児相が平成29年度に対応した児童虐待件数は933件(県児相497件、岡山市児相436件)で、前年度より11件増えています。少し長いスパンで対応件数の推移を見てみると、平成23年度が1,115件だったので、この7年で15%以上減少しているがわかります。全国の児相の対応件数は平成28年度122,575件で、こちらは平成23年度(59,919件)と比べ2倍以上に増えています。全国的な傾向とは異なり、岡山で虐待対応件数が減っていることは、児相や県の担当部局、県警、市町村、地域福祉の担い手など関係者の皆様の努力の結果だと評価したいと思います。他方で、1日に3件弱のペースで、虐待されている子どもがいるという現実は重く受け止めるべきです。児童虐待ゼロをめざし、取組の手を緩めることなく、さらにしっかりとした対応がなされるよう、私も議員の立場から問題提起をしていきたいと思います。

 結愛ちゃんのご冥福を心からお祈りします。

※岡山県の児童虐待防止の取組について詳しく知りたい方は、以下のリンクでご確認ください。「平成29年度岡山県虐待防止対策行動計画」
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/529510_4104883_misc.pdf

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