岡山県の新型コロナ感染対策のフェーズの切替の目安(案)について <その2>

以下、昨日の続きです。

②医療体制について

感染症対策では、感染を医療資源のキャパシティの範囲内にコントロールすることが最も重要です。活動再開・自粛の「目安」をつくるにあたり、県内の医療の余裕度に関する基準を設けることは絶対に欠かせません。

下の段の「活動自粛の目安」を見ると、医療の余裕度を測る指標として、

(カ)「感染症指定病院の入院患者数/感染症指定病床数」が、概ね5割以上であること

が挙げられています。5月15日現在の県の感染症指定病床数は26床(感染指定病院以外の医療機関を含めた確保病床数は117床)なので、13人以上入院患者が出れば、この目安をオーバーすることになります。陽性患者が2週間くらい入院することを考えると、県内のどこかでクラスターが発生すれば、すぐにこの目安を超える可能性が高いということです。感染者は、指数関数的に増えることがあり、一気にレッドゾーン突入という事態も考えられ、注意深く見ておかなければならない指標です。

ただし、これは医療機関の受け入れ態勢を整えることで、目安を超えないようコントロールすることが可能です。現在、県の新型コロナウィルス感染症の入院患者は、ほとんど全員が感染症指定病院に入院していることもあって(逆に言えば、感染症指定病床の範囲内で感染者が出ているということです)、現時点では、目安の指標となる病床を感染症指定病床に限定しているのだろうと推測します。ただ、県内の医療のキャパシティを判断するにあたり、感染症指定病床を見るだけでは不十分だと思います。指定病院以外の医療機関を含めた確保病床数や、軽症者や無症状者を収容するホテルなど宿泊施設の室数など、感染症指定病床以外の要素にも目を向けてもよいのではないでしょうか。第2波、第3波対策も含め、今後、医療体制のさらなる拡充が求められるのは論を待ちません。そうであれば、なおさら分母の部分には、県の医療供給の総合力を示す指標を取り入れるべきだと考えます。今後の検討課題にしていただきたいと思います。

また、重症者を死なせないという視点に立てば、病床数だけでなく、ICUや人工呼吸器、ECMOの数とそれを必要としている患者の数についての指標も必要かもしれません。もちろん、この目安の数値目標に取り入れられていないだけで、当然、「医療体制の逼迫」の中には、そのようなことも含まれているとは思いますが。

加えて、これは岡山県選出の衆議院議員・津村啓介さん(国民民主党)が提起し、「国民民主党の緊急事態宣言解除の5要件」に掲げられていることですが、

(ⅰ)陽性者の自宅待機が解消されていること

(ⅱ)医療従事者の防護体制が機能していること

も、手前味噌ながら重要な視点だと考えています。

津村さんは、(ⅱ)に関して、院内感染を防ぐため、入院前PCR検査、妊婦受け入れ前PCR検査の必要性を繰り返し訴えられています。岡山県内でも、県外から来られた患者さんが、主治医の判断で手術前にPCR検査をしたところ、陽性が確認されたケースがありました。目安に具体的に書き込むかどうかは別にしても、院内感染を防ぐための仕組みが整っているかどうかも、医療体制を考える上での判断材料にすべきだと思います。

③その他

活動再開、活動自粛ともに、目安として

(キ)国内や隣県の流行状況

(ク)監視体制や検査体制も勘案

としています。岡山県の場合、現在まで、市中感染が疑われるケースよりも、県外在住者が出張先や旅行先で罹患したり、県外からの来訪者が県内で感染が確認されたりするケースが多いため、近隣の県の感染状況などに注意するのは当然でしょう。とりわけ、今後、県境を越えた移動制限を緩和するかどうかを判断する際には、慎重な検討が必要だと考えます。

岡山県が、今回示した「目安」の中には、定数的、定量的な基準が示されていますが、掲げられた基準を全てクリアーしないと次のフェーズに進めないわけではなく、様々な指標を「総合的に判断」して対応が決まります。わかりにくい面もありますが、相手は未知のウィルスでまだまだ分かっていないことも多く、事態も刻々と変化しているため、複数の指標を組み合わせて「総合的に判断する」ことに異論はありません。いくつかの重要な指標は数値化されているので、その点は客観的な検証が可能ですし、全体として、県民がイメージしやすいものになっているのではないでしょうか。まずは、この「目安」を運用しながら、コロナ禍からの復興・復旧ロードマップ(ただし、逆戻りもあり)として活用されることを期待します。必要な修正は行うべきですが、その際には、恣意的な運用にならないよう、説明責任を伴う事は忘れてはなりません。

最後に、引用させていただいた山陽新聞さんの記事の見出しの付け方に、少々意見を申し上げたいと思います。

この記事の見出しは、「県が感染対策の緩和に向け目安 『活動の全面再開』など4段階」となっています。フェーズを4段階に分類し、その最終段階に「全面再開」と記載されているのは事実ですが、そのフェーズに移行する「目安」には、「ワクチンが実用化され…(中略)国民の大多数が免疫を獲得」という、感染症終息を判断する際の、当たり前の基準が書かれているに過ぎません。わざわざこの部分をクローズアップし、見出しに「活動の全面再開」を掲げる必要があるのでしょうか。読者の目を引くための工夫なのかもしれませんが、知事をはじめ県執行部が活動再開に慎重な姿勢を崩していない中で、このようなタイトルの付け方は、ミスリードな気がしてなりません。

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